2024年9月、インターン生は滋賀県大津市の「芸術準備室ハイセン」を訪問しました。かつて保養所だった建物を再活用し、誰でも気軽に使えるアーティスト・プラットフォームとして運営されているハイセンは、琵琶湖や山々に囲まれた静謐な場所でジャンルフリーに様々な創作活動を支援しています。組合員やサポーター制度に支えられた任意料金制(利用者が値段を決められる制度)、経歴の浅いビギナーやアマチュアがいつでも気軽に使える予約先着順など、施設使用料や審査制使用による負担をとことん軽減した、誰もが「創り続ける」ためのプラットフォームとして活動しています。レンタルスタジオ・アトリエとしての利用はもちろんのこと、多様な催しを行うイベントスペースとして、滞在しながら創作活動を行うアーティストインレジデンスとして、またチームで稽古を行う合宿所として、など使用用途は無限大です。今回はハイセンの取り組みや、地域と共存しながら創作活動を応援する姿勢について伺いました。(夏海瑶)
今回初めて伺い、まずはロケーションのよさに驚きました。窓からは琵琶湖が見え、周りには神社や山があり、静かでゆったりとした空気が流れるとても素敵な場所でした。
お話を伺う中で、「創る」ことのハードルがやけに高い今の社会で、創作をしたい人が誰でも創作できる場所をどう作っていくか、という問いにまっすぐ向き合っておられたことが印象的でした。大きな劇場や美術館で発表することだけが創作ではなく、意欲をもって創り続ける人々の営みこそが創作であり芸術であって、その営みを様々な面から涵養することに力を注いでいる場所があるということが、なんだかとても心強く思えます。
また、使用時に近所の人にあったら挨拶するルールがあったり、近隣のゴミ出しBOXを作っていたりと、スタジオ・アトリエでありながら、周囲にとけこみ地域に開かれる在り方が成立していることに驚くとともに、社会に対して独り善がりにならない姿勢がアーティスト・プラットフォームとしての姿勢にもつながっていると感じました。
夏海瑶
昨今、「アーティスト・イン・レジデンス(以下、AIR)」という制度を舞台芸術業界においても耳にすることが多くなった。AIRとは、アーティストが一定の期間ある土地で生活し、普段と異なる環境で創作活動やリサーチを行うことである。AIRを行うことでアーティストは自身の制作活動に没頭でき、また日常を離れた環境に身を置くことで、発想や表現に新たな視点を得ることも期待できる。一方で、AIRをするにはどうしても予算を確保できる団体、あるいは自治体や民間団体のプロジェクトや助成金に採択される実績のある団体に限られる側面がある。それに対して、「芸術準備室ハイセン」の特徴は任意料金制であるため、予算が潤沢に取れない団体でも利用できる点にある。さらにハイセンは審査なし先着順であるため、学生の稽古合宿であったり、滞在自体を目的に利用することもできる。創作活動のスタートアップとしても使用用途の可能性が限りなく大きい施設であるため、多くの若手演劇人に周知されてほしいと思う。
山下実美
■芸術準備室ハイセン
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所在地
〒520-0514 滋賀県大津市木戸1696-2