京都舞台芸術協会では、観客と創作物を守るために、舞台芸術の制作や発表の場において必要な知識を学び、共有し、ともに考える機会を京都芸術センターと共同主催で企画しています。2022 年度の「性的表現」、2023 年度の「トリガーアラート」に続き、2024年度は「インティマシーシーン」をテーマに取り上げ、講師にインティマシーコーディネーターの浅田智穂さんをお迎えしました。

インティマシーコーディネーターとは、映画やドラマ制作の際、俳優がヌードになる、あるいは擬似的な性行為や親密な身体接触が必要となるインティマシーシーン(親密な場面)の撮影において、俳優の安全を守り、制作側の演出意図を最大限実現するための調整を二者の間に入って行う専門家のこと。2017 年の #MeToo 運動以降、アメリカの映画業界で普及が進み、近年では日本でもその存在が注目されはじめましたが、日本では有資格者がまだ数名ほどしかいません。
レクチャーでは、浅田さんがこの仕事を始めた経緯に触れていただきつつ、アメリカにおける俳優組合の存在とインティマシーコーディネーターの資格制度、インティマシーシーンの定義、現場における仕事のプロセスなどを具体的に解説していただきました。お話の中では、日米の文化の違いにも触れられました。俳優組合が定めた明確なルールが存在し、契約に基づいて現場が進行するアメリカとは異なり、日本には明確なルールがありません。また、曖昧な状況にいることに違和感を感じにくいという文化的な特徴もあります。こうした中で、浅田さんがどのようにお仕事を進めていらっしゃるのか、具体的な進行についてもお話しいただきました。また、浅田さん自身も舞台芸術の現場でお仕事をされており、そのご経験にも触れながらお話いただいたことで、演劇やダンスの現場におけるリアリティもグッと増したように感じます。
浅田さんがとてもオープンにお話してくださったこともあり、質疑応答も参加者から活発な発言が続きました。同意/不同意についてのシンプルかつ本質的なワークを浅田さんからシェアしていただいたあとに行った参加者同士でのディスカッションも、各テーブルでかなり熱のこもったものになりました。
丁寧に合意を重ねていくこと、そして、俳優の意志を尊重し守ることはもちろん、強い表現にさらされるすべての関係者に対してのケアを意識すること。参加者のみなさんの、おのおのの現場での実践につながる、充実した機会になったのではないかと思います。
(担当:和田ながら)
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【開催概要】
舞台表現と「インティマシーシーン」について考えるレクチャー&ワークショップ
日時|2025年1月26日(日)14:00~16:00
会場|京都芸術センター 大広間(西館2階)
講師|浅田智穂
対象|舞台芸術に携わっている方
定員|30名
料金|1,000円
主催|京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、NPO法人京都舞台芸術協会