インターンシップ生 E9訪問レポート

  • 2023.10.25
  • 2024.06.22

2023年9月、京都市南区東九条に位置するTHEATRE E9 KYOTO(以下、E9)を訪問し、芸術監督のあごうさとしさんよりお話を伺いました。E9は2015年から2017年に相次いで小劇場が閉鎖して行った京都市において「100年つづく劇場」を作るべく設立されました。また、E9の位置する地域は「京都駅東南部エリア」として、京都市の文化芸術を主軸とした活性化事業の対象になっている地域でもあります。E9設立の詳しい経緯や京都市のアートシーンが持つ課題、そして舞台芸術とE9が今後発展、継続していくためにはどうすれば良いのかについて詳しくお話をお聞きしました。(興梠)

今回、日本の舞台芸術の成り立ちから、京都市における小劇場の栄枯盛衰、そして2015年以降の小劇場の相次ぐ閉鎖とE9の誕生まで舞台芸術の歴史について分かりやすく教えていただきました。私はあごうさんのお話を伺い、舞台芸術のあり方は人々の生活のあり方に連動し変容していくものだと感じました。余裕のある社会では舞台芸術は受容されやすく、市民が日常的に劇場に通う状況が生まれ、逆に余裕のない社会において人は舞台芸術の価値よりも騒音の原因となることなど他の側面に注目されるようになるのではないか、と思いました。あごうさんはE9を運営するにあたり、地域住民とのコンセンサスを何よりも大切にされていると仰っていました。それは(それだけが原因ではありませんが)住宅地に建設された小劇場が次々と閉鎖された歴史から原因を学び、現在の運営に生かされている顕著な例だと感じました。
また、地域との繋がりという視点からこれからの舞台芸術を考える良い機会にもなりました。あごうさんは「100年続いた小劇場は未だかつて存在しない」という旨のお話をされた上で「100年続く劇場」としてのE9のお話をされていました。文化・資金の基盤がなければ小劇場は続かない。舞台芸術は民の文化として発展してきたんです。という言葉が強く印象に残っています。小劇場での作品上演、野外劇など形態は様々考えられますが、上演を行う地域の皆様に理解していただき、参加いただくための働きかけを怠らないことが、今後舞台芸術が発展していくために不可欠なことだと感じました。この視点はインターン生としては勿論、 自らが主宰する劇団の公演を打つ上でも忘れずにいたいと思いました。
                                          興梠陽乃


アトリエ劇研をはじめとした京都の小劇場が次々となくなり、E9ができるまでの変遷をあごうさんご本人から聞くことで、舞台芸術の特異性のようなものを受け取りました。

私は20代のうちに感染症の大流行があったこともあり、演劇は世相を映す鏡のようなものだなと色々な局面で感じていたのですが、小劇場もまた、ひとつの鏡であったのだと思います。

なぜ、劇場が閉じてしまうのか。そして、なぜ新しい劇場を作ったのか。あごうさんは「必要だったから」というような言葉をさらりとおっしゃったことに、とてもびっくりしました。そういう発想が私にはありませんでした。

今回の訪問のなかで一番印象に残ったのは「やるか、やらないか」という言葉です。デジタルな空間だけでは決して成立しない舞台芸術の世界だからこそ、より一層深刻な言葉だと思います。公演にしても劇場の運営にしても、やることをやれればひとつのゴールにたどり着けるものです。

これから100年続く劇場になっていくE9がどんな未来を迎えるのか、非常にわくわくした気持ちであるとともに、自分も舞台芸術のためにやるべきことをやっていこうと思います。
                                          川崎未侑


■THEATRE E9 KYOTO https://askyoto.or.jp/e9

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