2024年4月 、インターン生は京都芸術センター(以下、KAC)を訪問し、プログラムディレクターの谷竜一さんにお話を伺いました。KACは1993年に閉校した明倫小学校を活用し、アーティストの制作支援や公募事業、公演、展覧会、イベントの開催などを行っている芸術文化施設です。
KAC立ち上げ当初から現在までのお話や施設の設備、実施してきた事業の概要などをお聞きした後、インターン生が関心のある話題について質問する時間をいただきました。(川崎)
大学生になってから京都に移り住んだ私が、最初にびっくりした施設が京都芸術センターでした。「公民館でも劇場でもない、駅から近くて稽古場や公演会場を無償で貸してくれるレトロモダンな施設があってね……」と、普段は嘘くさいことしか教えてくれない先輩がいたって本当のことを教えてくれたのをよく覚えています。
KACが特殊な芸術文化施設だという認識は、今回の訪問でさらに強まりました。自治の精神を持つ京都のアーティストたちや地域に根ざす人々、KACのスタッフ、行政組織が関わり合うからこそ、京都という地にフィットする、ほかの地域に前例のない施設が生まれたのだと思います。
なんとなく頭の中にあった、「ベテラン世代や海外アーティストの方々も利用している敷居の高い施設」というイメージを改めて、私も自分ごととして関わる姿勢を忘れないようにしたいです。お話を伺うなかで、声を上げなければ支援したり居場所を提供したりする側に気づいてもらうことすらできないんだと再確認しました。創作の中身について考えているうちに、ついつい芸術をとりまく環境について考えるチャンスを逃していたのではないかと思います。
どちらも大切なことですが、まずは自分たちがどんな創作環境を求めているのか棚卸しするところから始め、自分ごととして創作環境や地域に関わる接点を増やしたいです。
川崎未侑
京都芸術センターという場についてプログラムディレクターの谷さんからお話をお伺いした際、センターについて抱いたイメージは「行政・市民・アーティストの共生の要」というものでした。もとよりアーティストの制作支援の場として開かれた京都芸術センターは採択アーティストに無料で創作のための作業場・稽古場を提供する制作室事業や、展示・上演のための諸支援などアーティスト支援のための事業を展開しています。しかし一方で建物自体は京都市の所有であり、京都市からの委託を受ける形で事業を実施している側面もあり、その活動は条例によって裏付けされているものでもあります。さらに、文化財保護の観点から旧明倫小学校を再利用する形で開かれている場としての側面があり、地域住民にとっても重要な存在でもあります。お話を伺う中で、このようにアーティスト、行政、地域住民といったステークホルダーが交わる交差点に位置しているのが京都芸術センターである、という構図が浮かび上がって来ました。
お話させていただく中でも行政や市民にとっての「芸術の価値とその変遷」という話題がありました。芸術活動が金銭的に大きな利益を生んだり多大な経済効果をもたらすことは、他の諸ビジネスと比較して少ないように感じます。その中で芸術の価値を行政に示し、その重要性を伝えることはアーティスト単体では限界があるのではないでしょうか。そういった際、施策について把握しながらアーティストの要望を行政に伝え、地域住民の理解も得ていく上での要として京都芸術センターは機能していると感じました。そしてそういった機能を果たす存在が芸術発展のためには必要不可欠である、と強く感じました。
興梠陽乃
■京都芸術センター
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