舞台芸術の制作や発表の場における必要な知識を学び、個々の実践のなかで粘り強く考え続けていくための機会として2022年度から京都芸術センターと共同主催しているレクチャー&ワークショップ企画。4回目となる本年度は、植松侑子さんを講師にお迎えし、「アクティブ・バイスタンダー」をテーマに開催しました。

「アクティブ・バイスタンダー」とは、「ハラスメントや性暴力、差別などが発生している、あるいは発生しそうな場面で、その場に居合わせた第三者として状況を変えるために行動する人」*のことです。多様な職能やキャリアの人々が同じ作品に関わる事が多い舞台芸術の創作のプロセスには、打ち合わせ、稽古、劇場でのリハーサル、本番、打ち上げなど、さまざまな場面が含まれますが、そのどの時点においても、ハラスメントなどが発生する可能性が潜在しています。それは、誰もが暴力の当事者になりうるということと同時に、思いがけず立ち会ってしまった第三者にもまた、なりうるということです。もし、第三者としてその場に居合わせてしまったとしたら、どのような振る舞いがありうるのでしょうか。
*アクティブ・バイスタンダー協会のウェブサイトから引用 https://active-bystander.org/
植松さんのレクチャーではまず、ハラスメントの程度にはグラデーションがあり、グレーゾーンの行為がエスカレートしてしまう前の対処が肝心であることや、恐怖を感じる状況に直面した時の人間の反応(ときには加害者に友好的な態度を示すこともある)、自他の境界線をしっかり引き、「当たり前」の感覚が個々に異なる他者を尊重することの重要性など、前提となる考え方が共有されました。
それから、「傍観者効果」とそれが覆された研究を引きながら、なんらかの問題に気付いた時、適切な方法さえ知っていれば多くの人は積極的な行動が可能であり、そのため、介入の方法を知識として持つことには大きな意義がある、という話へ。アクティブ・バイスタンダーとしての安全かつ効果的な行動の類例が挙げられたあと、具体的な状況を想定したケーススタディで、個々人にどんな行動が可能かを小グループでディスカッションしました。
ディスカッションおよびその後の質疑応答では、参加者からの活発な発言がありました。アクティブ・バイスタンダーを概念として理解するだけでなく、この学びをいかにそれぞれの現場での実践に活かしていくか、個々人が想像しながら身体に落とし込んでいくプロセスが生まれていたように感じました。
ハラスメントなどの暴力は、第一に、十分な予防がなされていることが重要ですが、もしそれが発生した時にどのように対処するかもまた、現場における重要な課題です。健やかな創作環境のために、今後も、学び、考え、議論する機会を作ってまいります。
(文責:和田ながら)
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【開催概要】
創作現場と「アクティブ・バイスタンダー」について考えるレクチャー&ワークショップ
日時|2025年12月16日(火)19:00〜21:30
会場|京都芸術センター 大広間(事務所棟2階)
講師|植松侑子
対象|舞台芸術に携わっている方
参加費|1,000円
主催|京都芸術センター(公益財団法人京都市芸術文化協会)、NPO法人京都舞台芸術協会
参加者募集時の記事:



