2025年11月20日、京都市南区東九条にあるTHEATRE E9 KYOTOへ施設訪問。芸術監督のあごうさとしさんよりTHEATRE E9 KYOTOが開館するまでのお話を伺いました。
THEATRE E9 KYOTOは「京都に100年続く小劇場を」を目標に2019年6月22日に開館。2015〜17年に間に京都にある5つの小劇場が”所有者の高齢化”や”建物の老朽化”によって軒並み閉館。それに危機感を持った演劇関係者によって開館。2階建ての倉庫がリノベーションされ、1階にはこども食堂を行っているカフェ。2階には会員制シェアオフィスであるコワーキングスペースが設置されている。劇場では、演劇やダンスの他音楽や映画、展示などの様々なジャンルの作品が上演されている。年間スケジュールの作成やE9サポーターズクラブという劇場支援会員制度を有している民間小劇場は、国内では稀有な劇場である。

THEATRE E9 KYOTOという劇場が東九条という場所にどのようにして建てられたのかを芸術監督のあごうさとしさんは淡々と語りました。劇場がある東九条地域は、在日韓国朝鮮の方々が多く住まわれる地域で、そこに劇場をたてるには、京都市の許可は勿論、地域の方々からの了承も必要不可欠でした。あごうさんが何度も「民間劇場でも公共的なものとして考える、市民のものとして考える」と仰っていたのが今も心に残っています。
また、本劇場ではE9サポーターズクラブという劇場支援会員制度を行っている。この制度は本劇場と七つの連携劇場の公演が全公演観劇できる制度だが、この中にエリア限定会員があり、地域と劇場の相互の協力関係が存在する。しかし、パンデミックによってこの制度も一時は会員が激減し、現在はある程度持ち直したものの未だにその傷は深いとあごうさんは仰いました。これからの本劇場とこの地域が、どのように変化していくのかを見届けたいと思いました。(石川大海)

かつての京都における劇場の閉館ラッシュから、劇場存続が容易ではない状況の中で、「100年つづく劇場を」というスローガンを掲げて、現在まで多くの公演を上演し続けているTHEATRE E9 KYOTOが誕生したことが、どれほど舞台芸術にとって大きな出来事であったのか改めて実感しました。本劇場では、ワークショップや学生演劇関連の人材育成や、貸館料を安く設定し、可能な限り劇場での創作期間を長くとれるような工夫も行われているということから、作品を上演しやすい環境が実現されていました。
また、地域住民の方々とのかかわりについても興味深くお話を聞かせていただきました。あごうさんが「これからとこれまでのまちのコンテクストを大切にする」「一挙手一投足がまちの未来をつくる」とおっしゃっていたのが非常に印象的で、劇場が地域と関わり合って成り立つ公共空間であるのだと強く感じました。東九条という場所のバックグラウンドを大切にしながら、劇場をひらかれた場所として顔の見える関係性をつくっていくことが重要であるのだと思いました。(大橋萌加)
今回THEATRE E9 KYOTOが出来るまでの過程をあごうさんからお聞きしました。お話いただいた当時の状況は、長いようで実はとても短い期間内でのお話で当時のスピード感が伝わりました。舞台芸術への想いと問題意識から、こうも人は行動することができるのかと思いました。同じ問題意識を持っている人たちと出会えたことや活動されてきたことの積み重ねなど、運命的な出来事が交差してTHEATRE E9 KYOTOはできたのだと感じました。
私が特に印象に残っていることは、地域に劇場を作るのであればその地域の人たちの顔を知り、仲間となってもらうことが重要であるということです。地域住民にとって、関わりをつくることは安心材料にもなり、大切なことです。また、テクニカルスタッフの方々は小劇場文化を繋げたいというフリーランスで構成されていると知りました。劇場を開放しスタッフと交流できる「Visiting Hour」を月1ペースでを月1ペースで行っているとお聞きし、舞台を学ぶ学生としてはプロの方々に気軽にお話しにいける機会を作っていただけることをありがたく感じます。 (谷口華奈子)
■THEATRE E9 KYOTO
HP https://askyoto.or.jp/e9
X @TheatreE9Kyoto
facebook https://www.facebook.com/TE9Kyoto
instagram @theatre_e9kyoto
所在地
京都市南区東九条南河原町9-1



