NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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舞台芸術家のための契約書作りワークショップ_参加募集

   

舞台芸術協会では2019年8月18日「舞台芸術家のための契約書作りワークショップ」を開催します。

このワークショップでは昨年12月に開催した「舞台芸術家の為の法律セミナー」でお世話になった中村弁護士のご指導のもと契約書の書式や考え方などを学びます。参加者は、架空の公演や創作活動の「出演者」や「主催者」になって互いに話し合いながらオリジナル契約書を作成します。完成したものはシェアして意見交換、もちろん中村弁護士にご指導もいただきます。 
 実際に私たちが活動を通して「契約書」を作成する機会は少ないかもしれません。しかし自身が考える「関係者相互に大切なこと、コンセンサスが必要なこと」を明確にし、また他の参加者のそれを知る良い機会になるはずです。またワークショップで出来上がった「契約書」を元に誰でも簡単に使えるような「契約書テンプレート」を作りたいと思っています。 ぜひご参加ください。

日時:2019年8月18日 14:30~(2時間程度予定)
会場:京都市中央青少年活動センター中会議室
参加費:協会員-無料/一般-500円
ご予約:https://forms.gle/nVrkkPSN4MX7mpJz5

2018年12月「舞台芸術下のための法律セミナー」の様子

ワークショップに先立ち、この事業の趣旨や「契約書」についての個人的な印象などについて、舞台芸術協会の理事である田中遊と村上慎太郎の二人がふんわりとおしゃべりしております。ぜひご覧くださいませ。

田中遊(以下 田中) ではよろしくお願いします。改めましてこの夏、8月18日に予定しています「舞台芸術家の為の契約書作りWS」に向けて、理事の私と村上さんでおしゃべりしようということなんですけれども。よろしくお願いします。

村上慎太郎(以下 村上) よろしくお願いいたします!

田中 この企画は去年度に舞台芸術協会で実施しました「舞台芸術家の為の法律セミナー」から発生したというか「伸びた」というか、そういう企画です。(その企画のレポート)この会自体とっても楽しかったんですけれど、村上さんはどうでしたか?

村上 そうですね、僕、パソコンでずっと記録を取るので必死でした(笑)

田中 そうでした。すいません。おかげで良いレポート(上記リンク)ができました。ありがとうございます(笑)

村上 いえいえ。弁護士の先生に実際に来ていただいてお話をお伺いできる機会は中々ないので、気になっていたことなどを知れて大変有意義な時間だったことを覚えております。

田中 ですよねー。「弁護士」に初めて接しました、私(笑)。ほんと気さくなというか、フレンドリーかつ(当たり前ですけれど)知的な先生でよかったです。僕は中村先生(弁護士)がおっしゃっていた「口約束でも契約は成立します」という発言が印象的です。そうなんですね。知らなかったです。「口約束でも契約は契約」「ただし、その口約束が実際にされたかどうかを証明するためにはハードルが高い」それを証明するためには「文章。それはメールであったり、もちろん《契約書》という形をとっているのであればいうことはない」ということでした。僕たちが 舞台芸術に関わるなかで「できれば避けたかった…」というような摩擦や軋轢をキャンセルする効果がこの「契約」にはあるかもしれなくて、今回「契約書作りワークショップ」と、相当踏み込んだ会を企画してみたのですが…

村上 はい、いいと思います。

田中 とはいえ、僕は「契約書」というのは本当にさっぱりわからなくって(だからこそワークショップをしようということなんですが)まず、「甲」と「乙」ってあるじゃないですか?あれってなんなんでしょうね?「A」と「B」とか「花」と「ゆめ」とかでもいいんですかね?村上さんは「甲」と「乙」ならどっちがいいですか?

村上 どちらでも大丈夫です(苦笑)じゃあ乙でお願いします!

田中(以下 甲) じゃあ私が甲ということで。あ。ちょうど「田」と「中」の漢字をミックスしたみたいでしっくりきますわ。

村上(以下 乙)良かったです。

さて。村上さんは「契約書」についてどういう風に思っていますか?村上さんの現場で契約書とか使ってますか?また今後使いそうですか?

うちの現場では使ってはいないです。契約を交わさなくても、お互いコミニケーションをとってしっかりやってくれるだろうという信頼のもと座組を作るので、わざわざ作って・・というのはあまり考えてなかったです。なので自分の現場で契約書を作るとなると、どういうものが出来上がるのかは興味があります。正直、個人的には契約書というとビビってしまいます。漢字が小さなフォントでびっしりと紙に書いてあって・・それを全部読まないと・・という気持ちがきっと、そうさせているのだと思うのですが・・。遊さんの現場では使われてますか?

僕の現場で僕が作ったことはないです。行政や劇場が絡んだ企画、たとえば「京都市主催」とか「〇〇シアター主催」というような公演に出演させていただく時には、大体そういうものがありますね。「僕らレベル」という言い方はすごくふざけてますけれど(あえてそのまま使いますが)僕らレベルであんまり公演に当たって俳優さんやスタッフさんと契約書を交わすというのは少ないんじゃないかしら?

請求書や領収書のやりとりで済ませるのが多いでしょうね。

大きな問題がないなら四角四面に契約書とかにしないほうがフレキシブルでいいんじゃないかというのは、多くの人がおもうことでしょうね。ただ「関係がうまくいっている時には、ひっかかからなかったことが、何かギクシャクし始めたために、そこが引っかかって大きなトラブルになる」というようなことはよく聞きます。村上さんのこれまでの活動の中で「あー契約書を作っておけばよかった」と言うような事はありましたか?契約書に類するものだとか口約束でも構わないんですけれど後からそういえばしっかりと取り決めしてなかったなぁということでトラブルやトラブルになりかけた事はありますか?

若いとき、精算時に領収書を取ってない方がいらっして。領収書がない状態での請求が来たのですが数字が曖昧になっていて・・困惑したことがあります。契約書があるなら、領収書を取ってない場合は、どうするかも明記しておけばよかったとは思ったことはあります。その時は、公演予算からは請求せず、自分のポケットマネーでその人に支払いました。

領収書の取り方は最初の最初で確認しといたほうがトラブル少ないですね。助成金などが絡むと特に。宛先の名前の表記とか但し書きとかね。

あと小屋入り初日に若い舞台監督さんがワゴン車でやってきて、「照明さんの予算が浮きそうらしいんで、その分でレンタカーを借りました。」「ワゴン車じゃなくても良くない?」「でも、ワゴン車しかないって言われたんで。」と言ってでっかいワゴン車で、旅行用のトランク一台を運んできたとき、電車でガラガラ押してこいと思いました。みんな節約してやってるのに・・と。「契約時の予算の中でやること。オーバーする場合は要相談」と明記すればよかったな、と。オチとしてはワゴン車のお金は照明さんの浮いた予算では足りませんでした。もちろんマイナス分は自分たち劇団が補填するわけで。その後、その人とは、もう一緒にやることはありませんでした。それで縁が切れたことはもったいないなとも思いました。契約書があれば・・。でも、ワゴン車を借りる必要はやっぱりなくって。きっとそのワゴン車は別現場の運搬を一緒にしたかドライブに使っていたんだろうと予想しています。だって旅行用トランク一台ですよ?!それを僕らがお金を支払ったわけで。ということはありました。

ありゃりゃ…。本当の本当のことをいうと問題の核心はお金じゃなくて『信頼関係』だったするのだけれども、問題として表面化するのはお金のことだったり、約束のことだったりしますね。「そんなつもりじゃなかった」ということは日常(舞台芸術じゃなくても)いたるところにあります。でそうなったときに「そんなつもりじゃなかったけれども、まあ、この人が言うてることやし、ちょっと頑張ってみるかね」と思えるか、「あかん。無理」と思うか。そこに分水嶺はあると思っています。その「分水嶺」に関しては契約書はほとんど意味を持たんだろうなとも思います。

ただ「トラブった時」に契約書があった方が傷が浅くで済む。と言うことは間違いないかもしれませんね。契約書ってそのくらいの扱いになればいいなあと思っています。なんていうか「いい作品を一緒に作ること」とか抽象的で、契約書に書きづらそうですが、そこが実は一緒にやる上で一番大事という気がしてまして・・。

劇団などの継続的カンパニーなのかプロデュース公演なのかによって、その大事なこと(いい作品を一緒に作ること)の共有のされ方はずいぶん違います。もちろん劇団などの方が「大前提」として既に共有されているケースが多いだろうし、劇団内でわざわざ契約書を作って…というのはなかなか発想できないですけど、逆にいうとその「いわずもがな、当然」が、何かトラブった時に傷を深くするということも想像にかたくありません。「ボタンの掛け違い」って、「何にも知らない人同士」じゃなくて、むしろカンパニーの方が長年の間に水面下で「腐食」が進んでいて果てに大事故を招いたり…。ちなみに(村上さんの劇団)夕暮れ社弱男ユニットのメンバー間では本当に口約束?その業務というか『団体に所属すること』とか『ともなう作業とか』について、とかく取り決めはしてないかんじですか?

そうですね。口約束でスタートしてますね。もちろん団体規約とかはありますが。規約と契約書の違いも実はわかっていなくって。規約を作って承認された時点で契約を交わしたことになるなら・・という感じでして・・。

その集団内での約束事というか、慣習、常識というか、文字通り「不文律」があると思うんですが、そういうものを今後文面にしようとか思いますか?(思いませんよね)

もし、劇団と契約書を交わすなら・・さっぱり思いつかないですね・・。「定例ミーティングの月一回は必ず参加」とか「ブログは手分けして更新」とかですかねえ。でも、これも契約を交わして破られたら悲しいですからね。・・「契約書に書いてあるんだから、やらないとダメだよ!」とかいうのも・・なんていうかお互いしんどそうな気もします。

そもそも「いい作品を作ろうよ一緒に!」と言うコンセンサスが取れてない人と一緒に仕事してるって悲劇ですもんね…。ただ一方嘘かホントかわかりませんけれどハリウッド映画の俳優さんたちは「ケータリングの食事にまできっちりと指示がかかった」ような契約書作るというような話を聞きます。もし僕らが公演に際して契約書を作るとしたら入れるべき文言って最低限何でしょうね?「ギャラ」「本番の出演」「稽古の参加(と、稽古参加NGの時のやりとりの仕方)」とかかなぁ。あとチケットノルマ、マージンについてとか?

あとは、「広報宣伝の協力」「やむおえず天災などで中止になった場合どうなるか」とかですかねえ。

宣伝協力は入れたいですね。ただこれも具体的にしていけばいくほどなんか白けていくって言うか(笑)「1日2ツイートは公演のことを発信する」とか(笑)「やむおえず天災で…」は、ほんまですね!あー。どうなるんだろう?でも、僕今までハンコついてきた出演契約書にそんな条項あったけかなぁ…。

あとは「DVDや映像、youtubeの肖像権の使用、SNSへの顔出しに関して・・」とかも盛り込まないとですね!

あ。それも大事!権利関係ですね。弱男ユニットではグッズの販売を精力的にされてますよね?ああいう物の売り上げは劇団のお金になるのかと思うんですが、そのデザイン料だとか、権利関係だとか、作るための人件費? (手作りのものは無いのか?)の辺と言うのは、何か取り決めや約束をされたりしてるのですか?

僕が印刷して製本した上演台本を売るときに一度「僕に売上げはいくら入ってきますか?」と(劇団の他メンバーに)聞きましたが笑って「ないです」と返ってきました。しかし全く問題ありません。理由は、劇団があって僕があるし座組みで作った上演で。まあ、もし1万部とか売上げたら契約書あったらいいなあと思うかもしれませんが、そんなことは夢の話で。多分、100部売れても、いらないと思います。それより劇団や演劇できる環境が存続してくれる方がありがたいと考えているためです。権利とか主張するには規模が見合わなさそうです。

なるほどー。今年のこのワークショップにもご参加いただく中村先生(弁護士)が昨年度のイベントでおっしゃっていたのですが「まあ最低限『労働時間』ですよね。稽古が何回あって、本番やリハーサルがいつに何回あるのか?それに対して報酬がいくら支払われるのか」ぐらいの情報が契約書としては最低限必要だろう」というようなこと、それに近いニュアンスのことをおっしゃった。僕は『ああ。そうだよね。常識ってそう言うことだよ」と思い。また同時に「これは、我々界隈にとって結構ハードル高いぞ」と思いました。

稽古の回数は、どんだけ分析しても適切な回数ってわからないんですよねえ。うちらは、座組み決まってスケジュール聞いて、それで組んで行って・・という感じなので・・。それでも体調不良とか、別の仕事が入って・・とか変更とか往往にしてあったり・・。

創作の現場においてはできる限り制約がなくフリーハンドでやらせてもらた方が、作品の可能性は広がります。いわずもがな。稽古の時間でいえば「朝から晩まで、月曜日から日曜日まで」稽古をした方が(する可能性を残した方が)良い作品ができる可能性は広がるでしょう。もちろん「可能性」でしかないですけどもね。たくさん稽古したらいいものができるなんて単純なものではないから舞台芸術は素敵なわけですし。とはいえ、私で言えば俳優の立場で関わるのであれば「基本的に夜稽古」だとか「僕が急に仕事が入ったとしても一週間前までなら対応可能(休みにしてもらえる)」というような約束があると、やりやすい。逆にないと本当に「その人との人間関係」に左右されるし、なんども仕事して「この人の現場こういう感じやったし…」というような経験で判断するしかない。いろんな「制約」を明文化しておくことで避けられるトラブルも当然あるでしょう。ただその「制約」によってクオリティーの向上が阻害されることも当然あるだろうと考えられます。今回のワークショップの趣旨も「契約書は作らんとダメだぜ」というような啓発ではないです。そうしたくてもできないだろうし。僕自身が 正直このワークショップを経て「契約書の作り方が十全に理解できた」としても、自分が中心となる舞台芸術創作の現場で全面的に契約書を導入しようとは、思っていないです。ただこの界隈の舞台芸術家が、契約書を作る必要なケースになった時に、手っ取り早く使ってもらえるような契約書のテンプレートがあったら便利だなぁと。そういうの作れたらいいなぁと思っています。

そうですね。完成したら舞台芸術協会のホームページで公開して誰でもダウンロードして使ってもらえるようにする、という話をしています。それは契約書じゃなくて「覚書」でもなんでもいいのですが、お互いに気持ちよくやっていく為の条件を明文化できて、主催者側と出演者(技術スタッフ)の間で共有できる書面の雛形ですね。

はい。それを目標にがんばりましょう。

よろしくお願いします。

まずは「僕やったら(契約書の文言に)これは入れとく!」というものを収集していくのがいいかもしれませんね。ダンサーさんとかだとまた違うかもしれないよね。「稽古前にストレッチする時間を60分はとってほしい」とか。僕は俳優の立場なら「稽古初日に台本の第一稿は上がってること」だし、作演出家として俳優にいうならは「二週間前に上がっている台本に関してはセリフを覚え(ようと少なくとも努力し)て稽古に来ること」だし(笑)

そのリサーチは、良いかも知れませんね。個人的に興味もあります。

ですね。そのリサーチも踏まえて、中村弁護士にご指導いただきながら「架空の公演」についての契約書を作ってみるワークショップをすると。まぁそういうことですね。

はい。ワークショップでは、ざっくばらんに喋りたいですね・・あんまり賢いフリをしないで。気軽に使える契約書や覚書があれば、勉強にもなるし、京都だけでなく全国各地やいろんなジャンルの舞台芸術で使ってもらえるものになったら素敵だなと思っております。

なんせ面白いワークショップにしたいですね。よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

 - 2019年度事業, 募集、告知

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