NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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「舞台芸術家のための契約書作りWS」実施報告

      2019/08/26

「舞台芸術家のための契約書作りWS」実施報告

文責:田中遊
「舞台芸術家のための契約書作りWS」を実施しました。

2019/8/18/14:30~ @中京青年の家中会議室にて。参加者は協会員含め19人。参加者同士で話し合いながら架空の公演について契約書を作ってみるというワークショップです。去年実施した「舞台芸術家のための法律セミナー」に引き続き今年も弁護士の中村和雄先生にご足労いただき具体的で貴重なアドバイスをいただきました。「民法」「イベント保険」「違約」…様々な事柄について知識を深めることができた大変意義深い会になりました。以下レポートします。

ご注意:記事内の中村先生のご発言は、当日、京都舞台芸術協会が速記したものを編集したものです。前後の文脈が欠落していて、あるいは不正確な表現があるかもしれません。実際に契約書を作成されるにあたってはご自身で改めて法律家にご相談されることをお勧めします。万が一当記事をご参考にされて作られた契約書の不備などでトラブルが発生したとしても当協会、中村弁護士ともに責任を取れません。

14時30分。冒頭、田中の方から趣旨説明をさせていただいたのち、中村先生から自己紹介。引き続き先生の方から「契約書」について少し説明をいただきました…

中村弁護士(以下敬称略)        京都で35年弁護士として活動しています。去年楽しい企画だったので、今年も是非気楽にやり取りできればいいなと思っています。この企画が立ち上がった頃にちょうど吉本が問題になりましたね。実は吉本の芸人さんのほとんどは「労働者」じゃないんです。ネタの中で色々言ってますが、法律的には全然問題ないような契約になっている。「労働者」とは違う立場として働いています。「労働者」になると、もうすぐ京都(の最低賃金)は909円になります。ですが吉本の芸人さんの多くも舞台芸術の例えば俳優さんも、時給換算するともっとずっと低い金額で拘束されています。舞台関係ではほとんどの人が労働者として契約していないのではないでしょうか。

ここは「当たり前」の話ではあるのですが、「グッとくる」ところではあります。「お金がないから、美術費を浮かすために、みんなで美術や小道具や衣装も手作りしよう!」とか私の経験上よくあったのですが、「その時間、バイトして、そのお金集めて発注すりゃあもっと良いものになるんじゃないの?」というのは思ったりしました。同時に「いやいやそういう話じゃないんだよね」と思ったり…。

中村和雄弁護士。今年もお世話になりました!

中村      あと、舞台芸術活動では、「公演後DVD作りますー」、「写真使いますー」とか、いろんなことをしていますが日本ではほとんど契約書を作らない。(舞台芸術の世界で)契約書によって出演している人は、17パーセント(という調査結果もある)。もちろん口頭で決めてもいい。それで、契約は成立はするが、記録を取っておかないと、「言った言わない」の話になる。だから、書面にしておく必要がある。自分たちが仕事する上で、どのように書面にしておけばいいのかを限られた時間ですが学べたらいいなと思っております。

先生のお話ののちワークショップ開始です。まず参加者を四つの班に分けました。班分けののち班のメンバー同士で自己紹介をしていただき、さぁいよいよ契約書作りの始まりです。今回のワークショップは大きく前後半の二回のグループワークで契約書(みたいなもの)を作ってみようという試みでした。まず前半のセッション1で「公演の概要」と「諸条件」を箇条書きにします。各班の成果を他班ともシェアし、中村先生からご意見アドバイスをいただきます。それを受けて後半のセッション2で実際に「契約書」の書式にしてみます。出来上がった成果物を他班ともシェアし、再び中村先生からご指導、ご意見をいただく、という運びです。班は「甲乙カード」を引いてもらって決めました。当日まで「二人組でのワーク」を考えていたのですが、中村先生のアドバイスもあり急遽4班(3〜4人)でのワークに変更。

セッション1です。まずは「公演概要」を決めます。目安は5分間(!)です。続いて、「内容、条件」を決めます。ここまでを箇条書きにするのがセッション1でした。15分間というとっても短い時間でしたが各班でいろんなことが話し合われていました。

セッション1終了後、成果物をコピーしている間、会場では「労働契約」と「請負契約」について中村先生からレクチャーがありました。

中村         ウーバーイーツとかありますよね? ピザとか配達してくれる。彼らも労働者じゃない。請負契約というものになるんです。
田中         ウーバーイーツはこけたら自分で治療費を払わなあかんから大変みたいですね・・・。

ここでの「労働者」とは「働く人」という一般的な定義ではなくて法律上の「労働者」ということだろうと思います。また同じ法律上であっても「労働基準法における『労働者』」と「労働組合法における『労働者』」とは必ずしも範囲が一致しないケースもあるだとか…(プロ野球選手の例をあげて中村先生にご教授いただいたのですが、すいませんきちんと理解と速記が追いつきませんでした…参考ページ>https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11909500-Koyoukankyoukintoukyoku-Soumuka/0000181992.pdf

何しろ、法人化しているようなカンパニー内で「労働雇用契約」というような形がとられている事例はよく聞くことではありますが、より小規模なカンパニー、またプロデュース公演などで「出演者」「演出家」「スタッフ」となどの人々が仕事をする際に労働者として雇用契約を結ぶことが稀なことは事実だろうと思います。

中村         労働契約ならば、労働者として認められたら、法律として労働時間の規制・賃金の規制があり。労災保険の給付もある。有給もそうですね。
参加者     労働契約は週一回の出演でも結べるのですか?
中村        結べます。週一に朝8時〜5時の場合でも「労働者」と認定されるケースはあるでしょう。判断基準として重要なのは、「使用者の指揮命令のもとで労働しているか?」「賃金を支払われているか?」などです。ほかにも「業務の指示に対する諾否の自由の有無」や「勤務場所、時間ついての指定や管理の有無」「専属性」など、結構たくさんの要素を総合的に考慮して、その人が「労働者」か否かと言うのは判断されます。皆さんが出演者だったりダンサーだったりする場合、労働者として認められるか難しい。例えば、NHKの体操のおねいさんとか朝、スタジオに行って、こうしてこうしてと決まっていれば労働者となる場合もあるのでは…?(冗談です)
※参考>https://www.jil.go.jp/hanrei/conts/01/01.html

労働雇用と請負雇用

【労働契約】最低賃金、労働時間の制限、保険、有給など、いろんな規定があり、労働者は「雇用者より弱い立場」として保護されている。
【請負契約】お互い意思の合致。対等な意思で契約する。舞台出演の人たちはほとんど請負契約。自由に決めることができる。雇用者と対等な立場であるので特段の保護はない。

労働者であればバイクで職場に向かう最中に事故に会えば労災がおります。俳優が稽古中に怪我をしたとしても労働者でなければもちろん労災はおりません。ではそういう時にどうするのか?治療費は?仮にそれで出演ができなくなったらば…?そういう万が一のケースに備えるのが契約書の一つの大きな意味かもしれません。

成果物のコピーができ、参加者に配りました。

【1・2班】

稽古参加する日数(というより総時間)がしっかりとに反映された結果、端数のあるギャランティーになったとのことです。「時給換算でいくらは欲しいよね」ということから試算したとのことでした。

【3・4班】

この班も「稽古参加することでの拘束」にしっかりと対価を設定しようという方向性だったように思います。交通費に関しても書きたかったが時間が足りなかったとのこと。たしかに「交通費はよく、ふわっとする」というのは私の経験です。出演料としてのギャランティーはちゃんと話できるけど、たとえば大阪に稽古でも度々行かなあかん、となった場合、「あれ、これ話してなかったけど・・・出してもらえるのだろうか?」というようなケースはよくあるのではないでしょうか?

【5・6班】

この班は「リハーサル(稽古)参加料は出演料に含む」という方向で考えてくださいました。私界隈の演劇の現場ではそれ(稽古参加料は出演料に含む)がオーソドックスです。ダンスや音楽の現場ではまた違う、とは聞いています。

【7・8班】

この班は契約破棄した場合の違約金についても考えていただきました。これこそ「万が一」。そしてだからこそ約束しておかないと、不幸にもそうなった時、とんでもなくややこしいことになるだろうことは想像にかたくありません。

中村先生に各班の箇条書きにお目通しいただき、各班への感想、ご指導をいただきました。以下は全班に対しての問題提起というかコメントです。

中村      この前、台風が来ましたよね? 中止になっちゃいましたという場合、ギャラもらえるのかもらえないのか? 自然災害の時のことは民法で決まってることはある。(出演者の)身体的なことによる中止の場合について詳しくは法律には書いていない。

台風などの天災で公演が中止になった場合、これは「どちらか一方が契約を不履行した」ということではありません。ですので違約金というのはもちろんフィットしません。では「出演がなかったから全くノーギャラ」なのか?ということになると「うーん」と考えてしまいます。こういう場合にどうするか、が契約書にきちんと書かれておれば問題ないのですが…。で、契約書にそういうことが書かれていなかった場合どうなるのか?というと法律的には「民法」というものを参照することになるのだそうです。その民法には「天災」などのケースについての記載はある。しかしながら「俳優がインフルエンザ(病気)で出られなくなって公演が中止になった」場合などの記載はない。ということだろうと思います。そうなった時にインフルエンザにかかった当事者以外の共演者(公演が飛んだから出演はしていない)の出演料はどうなるのか?など、可能性考えていくと契約書に書かなきゃならないことが、いっぱいありすぎて…。どうまとめて書くべきか、ちょっとこれは難しいなぁ…というのが正直な感想です。

中村      沢田研二のキャンセルの場合、どうなったのか法律的には興味ある。また、例えば、あまり稽古ができてなくって、お前は出来てないから来なくていいと言われた場合、どうやれば解約ができるのか? ダンスでもできてない場合、どうすれば解約できるのか? 法律では決まっていない。 拒否できるのか? (役を)おろされないのか、おろせるのか?
参加者       そういう場合って、双方ですよね?
田中   そうですよね。
参加者     演出家がちゃんとしてないとか演者がちゃんとしてないっていうのはそういうケースの場合、双方に(問題が)ありますよね。
田中         話が(作品や芸術性、演技やダンスの)クオリティーになってくると、ごっついややこしいですねぇ…

そうなんです。俳優もダンサーも労働者ではない、とするならば、演出家が「お前使えねーよ!明日から来なくていいや」って言うのと対等に、「演出がまるっきりセンスなくって付き合えねーわ。明日から来ねーよ」と言えるはずなのです。そう言えるかどうかということが契約書に書いていないのならば基本「降りる」も「降ろされる」もなしのはず…もちろん民法や刑法に引っかかるような、たとえば「ひどいパワハラや暴力行為があった」となるとその契約自体が無効になるのでしょうが。

参加者     「公演の一ヶ月前時点で、演出家が出演者に対して必要なクオリティーに達していないと判断した場合、契約を解除することができる。また同じく公演の一ヶ月前時点で、出演者が演出家に対して必要なクオリティーを持っていないと判断した場合にも契約を解除することができる。」とかいう条項をいれるのはどうか?

という意見も出ました。剣呑です(笑)関係がささくれだちそうでちょっと実際に契約書を作るにしても僕なら入れられないかもしれません。ただこの条項はある意味「健全」だと感じます。むしろこれぐらいの気概と危機意識を持って協働し、タイムリミットの一ヶ月をすぎたなら、もう言い訳なしで双方何しろ少しでも良い作品を作ることに注力する。というのは作品にとっても良いことではないかとも思います。(劇団などではもちろんまた話は違ってきますが)問題はそういう「健全さ」を導入することを我々に躊躇さす心理的要因じゃないかと思います。「契約書は交わして当たり前」「(健康問題や事故とかじゃなく)降りる、降ろされるなら、本番一ヶ月前まで。逆に一ヶ月前までは双方それぐらい緊張感を持って協働するってのが普通」という環境になってくれば「信用」というようなことにビクビクしなくて済むのかもしれません。

先生含めここまでの振り返りが終わり、セッション2の開始です。ここではセッション1で作った箇条書きをもとに書式に基づいた「契約書」を作ってみます。制限時間は前半同様15分。ちゃんとした契約書を作るには全然足りない時間の中、各班、健闘していただきました。

成果物をコピーをして全員でシェア、中村先生にコメントをいただきました。

1・2班 公演名「いらん」

中村  体裁は整ってますね。
参加者       時間があれば足したかったのは、怪我の時どうするのか? 稽古のキャンセルの時どうするのか?等です。
中村  こういう出演契約で、絶対に書かなくてはいけないのは、出演者が誰か、報酬、日時、会場、時間・・・
参加者       全ての出演者を書かなくてはいけないんですか?
中村  他の人たちのことは書かなくても良い。です。あとは、顎・足・枕がよく問題になる。食事代よく揉めるんですよね。給料からお弁当が引かれるとか・・足は交通費。枕は、宿泊費…

以下、中村先生からご指摘いただいた舞台芸術に関わる出演やスッタフへの業務委託などに関する契約書で「必要且つ重要」と思われる項目です。

  • 誰と誰の契約か?甲と乙が誰なのか?
  • 公演の概要(日時、会場、時間、ステージ数)
  • 稽古期間(何月何日から始まるのか?)
  • 請け負う仕事の内容(出演者であれば、「出演」「稽古参加」「宣伝協力」他。スタッフであれば「照明プラン」「オペレーターの斡旋」ほか)
  • 報酬(支払い期日も)
  • 食費(小屋入り後など終日拘束に近くなった場合の夕食昼食をどちらが負担するのか?)
  • 交通費(稽古場や劇場への交通費。また多会場公演の際の移動交通費)
  • (宿泊費)
  • 宣伝協力(稽古場の写真などの肖像権など)
  • 再販時の権利(上演ビデオの販売や配信など)
  • 公演および稽古スケジュールの変更の手続き(どう言う形で決定するか?あるいは拒否できるのか?)
  • 公演中止延期に関して(ギャランティーの支払い。賠償金など)
    a)自然災害事由の際について。
    b)創作活動内(稽古や仕込み)での事故等事由の際について。
    c)創作活動外での乙(出演者orスタッフ)が責任を追うところの事例によるものについて
    d) 創作活動外での乙以外のものが責任を追うところの事例によるものについて
  • 甲、また、乙が契約解除できる条件。
  • 解除できる要件を満たさない形で一方が契約を破棄した場合の違約金について。
  • 事故保証。(稽古場や劇場での本番、リハーサル時に怪我や事故が起こった時、どちらがどれだけ保障するのか?)

このようなものを元に京都舞台芸術協会でもモデルが作れたらなあと思っています。まだ少し時間はかかりそうですがカジュアルに使えるテンプレートが協会のwebサイトからダウンロードできて、誰でも適宜編集して使えるようなことになればいいのですが…

3・4班

中村         問題意識はいいですよね。 違約金などいくら取れるのか、事前に決めておける方がいい。天災は仕方ないけど、自分の都合の場合、どこまで補填するのか?範囲が難しい。
参加者     今、野外公演を予定しています。興行保険(イベント保険)をかけることは決めていて、それをどこまでかけるか考え中です。出演料7割払ってくる保険とかもあるのだが…(当然、保証の分厚さに比例して掛け金は跳ね上がるので、バランスを見極めているところである)興行中止保険をかける前提であれば(契約書に書く文言は)「公演が中止になった場合、保険で補填します」でいいのかなと思ったのですが・・・。
田中  興行中止保険って・・天災による中止にだけですか?
参加者     (私の検討している保険では)(出演者の)病気事由で中止になった場合にも保証はあります。ただ三日間の公演をするにあたって、1日だけ中止になった場合などに(既売分のチケット料金払い戻しなどが)保障されるのかどうかは、詳しく問い合わせてみないとわかりません。出演者だけでなく、音響さん照明さんのギャラも補填してくれるものもあります。
田中         主演俳優がダメになった時にでも、我々の現場ではアンダースタディーとか準備できてないのが普通ですもんね・・・
参加者     イッセー尾形さんの代役とか難しいですよね・・。

事故や病気による俳優の降板、また天災などによる公演中止時にどう備えるのか?ということについては契約書にどのように書いておくか?も重要かもしれないが、実際的にはむしろ「イベント保険(興行保険)」をかけることが重要ではないか?というご意見でした。これは確かにそうです!天災も事故も起こる時には起こるわけですから個人として生命保険、自動車保険、火災保険に入るぐらいの妥当性で、イベントをするときにはイベント保険に加入する、ということが自然ではあろうと思います。ただもちろん公演の会計に掛け金のコストが上乗せされます。またその掛け金の算定の仕方は、自動車保険のように「ゴールド免許で軽に乗っている方は年間いくら」とシンプルなものではなくて、「時期は?チケット料金は?予想集客数は?三日で5ステージ予定のうち台風で2ステージだけ飛んだ時にチケット払い戻しの保障はあるのか?」とか、おそらく相当色々とややこしいんだろうとは想像します。しかし、まぁかけといたほうが安心なのは間違いないですよね。このイベント保険の勉強会を舞台芸術協会でできればいいなあと思います。また協会理事や協会員以外他の方でもこのような互助的な勉強会を開かれる有志の方がいらっしゃいましたら、本当に微力ですが京都舞台芸術協会として広報の協力などさせていただきたいと思っていますので、是非ともご連絡くださいませ。

中村  合意管轄とかまで書いてあるのはいいですよね。代理人をつければいいですけど。どこで裁判やるかとか重要な話。

なぜこの項目が必要なのか僕にはさっぱりわからなかったのですが、先生のご説明を聞いて納得できました。つまりもめにもめて裁判にまでいってしまった場合、たとえばこの「合意管轄」が東京のどこかの裁判所だとして契約書にハンコを押していると、京都在住の私は、裁判のたびに東京まで出向かないとならない!ということなのです。交通費もかかります。代理人を頼んだとしてもその人へのお礼も要る。なるほど…です。

5・6班

7・8班

全四組を受けて中村先生の総評です。

中村  なんとかなるなあって信頼してスタートするのだけれど、お互いの思いが違うので、もめることもある。(もちろん揉めないケースもいっぱいあるが)もめる前に決めておかないと、もめてからでは決めにくい。なので事前に文書で決めておくことはとっても大切なことだ。

参加者一同、深く頷き合ったコメントでした。ただ大切だとはわかりながらもじゃあ「実際契約書つくる」となるとまだまだハードル高いなぁ、と思ったのは私だけではなかったと思います…。
その後、参加者から中村先生への質問に移りました。

参加者     観客動員に協力して欲しい場合、チケットバックマージンどう書けばいいのか?
中村         (平たい言葉で構わないし、文章が長くなっても構わないので)きちっと全部書けばいいんじゃないかな。

おそらく、「乙は、本公演の前売り券2000円のチケットを一枚売るに付き500円をバックマージンとして受けとることとする。」というような具体的なことを記載すれば良いと言うことかと思います。

参加者     契約解消できる条件についてはどう書けばいいのか?
中村         むずかしい。が、「いつまでにどこまで到達しなかった」とか抽象的でもいいけど、書いておくと、なにかしら手がかりにはなる。(もちろん具体的なことを記載しておくに越したことはないが)

参加者     出演料に(リハーサル、稽古も含めるとか)書いておかなくてはいけないんですかね?
中村         出演は発表のことだよね。稽古、リハーサルは別だよね。分けて考えるのが普通ですが、もし「込み」になるのであればそのことは記載しておくべきでしょう。

参加者     SNSで、感想は何書いてもらってもいいが、(明らかに事実無根である)根も葉もない悪評(つまり嘘)の場合、営業妨害として訴えることは可能なんですか?
中村         削除要求、差し止めは今はやりやすくなっている。一定の要件があれば認められる。名誉毀損、信用毀損、とかまでいけば、悪質な場合いけます。慰謝料的なものを追求する場合、弁護士さんを雇わないと難しい。そして裁判をして勝ったとしても(慰謝料って)思ったよりもらえない。

参加者     違約金の明記。金額は、きっちり書かなくてはいけないのですかね?
中村  書くべき。ただ、膨大な金額を書いてあったら「(民法にある)公序良俗違反」で、認められないことが多い。(街のガレージなどで見かける張り紙の「違法駐車された方には50万円いただきます」などがこれに当たる)

参加者     (その人が自己事由で降板した場合、違約金としてその人の)代役の人の出演料分も請求していい?
中村  おかしくないですね。

参加者     「契約書に記載がなかった場合は民法が参照される」ということで民法って大事だと思います。実際問題私たちは知り合い同士で、演劇活動をやることが多く、正直なところこの先も「契約書を交わして…」ということにはならない気がしています。そうなると大切なのは民法を知ること。もめる前に民法とやらにはどんなことが書かれているのか?ということを知っておくことかと思うのですが法律に明るくない私たちは、どうやったら民法のことを知ることができますか?
田中         ググったらどうでしょう?
中村         ググるのはお勧めしません。Webのその手の情報は7割はあってるが、3割間違ってる。専門的なことになると、間違ってることが多い。やはり専門家に聞くのが一番です。また民法が(2020年)4月から多少変わります。少しだけね。常識的なことが書いてありますが、時々、え?と思うことが書いてあるので気をつけてください。

…というようなことでワークショップを終了しました。私にとってとても学びの多い会になりました。多くの参加者のみなさんにとって同じくそうであれば嬉しい限りです。暑い中ご足労いただきましてありがとうございました。

 - 2019年度事業, 未分類

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