NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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【実施報告】”あなた”と”表現”を生かす「からだの使い方」──アレクサンダー・テクニックにできること 2021(2021.8.9)

   

2021年8月9日、俳優のためのワークショップ企画「”あなた”と”表現”を生かす『からだの使い方』──アレクサンダー・テクニックにできること 2021」をオンラインにて実施しました。

本企画は昨年11月に行った同名ワークショップの第2弾。舞台に立つ俳優が「からだの使い方」を学ぶことの意義やその具体的な方法にアレクサンダー・テクニック(以下AT)の手法を通して迫り、自分自身や表現のまだ見ぬ可能性にアプローチするものです。
講師は昨年に引き続き、「アレクサンダー・テクニック・センター スタジオK」主宰の芳野香先生。昨年は導入編として講演中心のメニューで行いましたが、今回はそこから一歩進み、ワークを中心とした実践的なメニューで実施しました。小劇場の俳優やオペラ歌手など4名の方にご参加いただき、インターン生2名が受講および配信のサポートで参加しました。

レクチャー

まずはじめに、アレクサンダー・テクニックの概要や、俳優に求められる技術、このワークが目指すところ等についてのレクチャーが行われました。

今回のワークのテーマは、”表現のための「リラックス」”です。
リラックス(relax)とは、「ラックス(lax)な状態に戻すこと」。reは「再び」、laxは、「緩い」「弛緩した」「たるんだ」などを意味しています。つまり、「リラックス」の本来の意味は、ラックスという元々の状態から逸脱してしまっているのを元に戻すこと、といえます。
創作の過程においては、早々に完成状態を決めてかためてしまうことではなく、ある程度変更可能な状態を含みながら、臨機応変にものごとを積み重ねていきつつ完成を目指すことが必要とされます。俳優も、ひとつの完成状態でカチカチに固まっているよりも、たとえば粘土細工のようにほどよくゆるんだ状態に自分を保てる方が理想的です。
このワークの目的は、そんな「ラックスな状態」となることを阻害している要因を取り除き、表現のために出したいことを出せる状態を作っていくこと、という方針が芳野先生から示されました。

私個人の体験として、演出家として稽古に臨んでいるときに、俳優さんが「こうしたい」と思っていそうなのに、緊張や遠慮などの理由からそれを自ら取りやめてしまっているな、と感じたことが少なからずあります。緊張しがちな現場の中にあっても、自分の中にある感覚を素直に身体化できる状態を自分自身で作り出せれば、俳優にとって大きな強みになります。「ラックスな状態」を保つことは、俳優の非常に大切な技術のひとつと言えるのではないでしょうか。

ワーク

10分弱の短いレクチャーを経て、さっそくワークの実践に入りました。
ワークは、ヨガマット1枚分くらいの小さなスペースで、輪ゴムとハンドタオルを使用して行っていきます。

まず、普段から行っている何らかの準備運動、たとえば深呼吸や簡単なストレッチなどを、自分で選んでやってみます。これは、これから行うワークのビフォア/アフターを確認するためのものです。準備運動の感覚を覚えてからワークを実践し、ひとつのターンが終わるごとに再度その運動を行って変化を感じとっていきます。

実際にワークとして行ったことは、ハンドタオルを首や背中にかけたり、輪ゴムを足首や足の指などに様々なやり方で引っかけたりした状態で、特定の動作を淡々と行っていく、というものです。詳しい方法については割愛しますが、実施そのものはそれほど難しいものではありません。比較的ゆったりとした単調な動きで、負荷や刺激もあるのかないのかわからないくらいにささやかで、芳野先生もおっしゃっていたように、ともすれば退屈と感じられるようなものです。
しかし、ささやかな刺激だからといって効果がないわけではありません。実際、ワークの合間合間に最初の準備運動をやってみると、前向きな変化がさまざまに起きていることがわかりました。呼吸がしやすくなっていたり、股関節の動きが滑らかになっていたりなど、働きかけた場所とは違うところの可動域が広がり、それにつれて気持ちの上でも落ち着きが増していくのが感じられたのです。
芳野先生が「見渡しがいい、という感じの集中」と表現されていたように、散らかっていた気持ちがまとまりつつも、決して視野が狭くなるわけではなく、頭の中がクリアになっていくような感覚が得られました。
参加者の皆さんもそれぞれに変化を感じられていた様子で、ワークの最後のほうには動きも最初と違っているのが見てとれました。
特定の筋肉に強い負荷をかけるようなストレッチとは違い、やっている間はどんな変化が起こるのか全然わからないのに、いつのまにかからだが伸びやかになり気持ちも整って行く、という不思議なワークでした。

ワークのあとには、芳野先生から「このワークで重要視しているのは、肉体は健康だけれど、なんらかの連携が取れない状態になっているために使えない=連動できない状態を引き起こしている障害を取り除くこと」との説明がありました。
創造の現場では、不安や焦りからつい緊張状態に自分を置いてしまいがちです。こうしたワークをうまく使えば、不安そのものではなく、不安を生み出している自分自身の希望や目的意識にフォーカスし直し、のびのびと創造できる状態に自分を「リ・ラックス」することができるかもしれません。このワークがそんなふうに作用し、皆さんの創造活動の質を一段も二段も上げる下地となれば、という芳野先生のお話でワークの時間は終了しました。

質疑応答

ワークのあとには質疑応答の時間を設けました。参加者の皆さんからは、以下のような質問が出ました。

  • アレクサンダー・テクニックを、個人レッスンやワークショップに通う、あるいは学校に通う以外で学ぶ方法はあるか
  • 足を前に投げ出して座る姿勢がしんどかったのでごまかしながらやってしまったが、ほかに良い方法はあるか
  • 最後のワークでとった姿勢がしんどかったが、それは腹筋が弱いからなのか
  • タオルのワークの効果がわかりにくかった。リラックスのためなのか、刺激のためなのか、どちらなのか

質問をもとにした応答の中からも、さまざまに重要な発見がありました。中でも、「クリエイションの場においては、より細やかな変化に気づける土台を作ることが大切」という芳野先生のことばがとても印象的でした。

終了後のアンケートでも、参加者の皆さんから前向きなご感想をいただきました。今後も機会があれば、必要としている方にお届けできる場を設けられたらと考えています。

(文責・筒井加寿子)

 - 2021年度事業, 事業関連

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