NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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2020.11.23 俳優向けWS「”あなた”と”表現”を生かす『からだの使い方』──アレクサンダー・テクニックにできること」実施報告

      2021/01/17

去る2020年11月23日、俳優のためのワークショップ企画「”あなた”と”表現”を生かす『からだの使い方』──アレクサンダー・テクニックにできること」をオンラインにて実施しました。

このワークショップは、舞台に立つ俳優が「からだの使い方を学ぶ」とは一体どういうことなのか、その意義や具体的な方法に迫ってみるべく企画したものです。
講師は、「ATCスタジオK」主宰の芳野香先生。1994年にアメリカで日本人として初めて最年少で全米公認資格を取得し、1995年に京都で「アレクサンダー・テクニック・センター スタジオK」を設立。個人レッスンや講演、大学での授業、ワークショップなど豊富な指導経験をお持ちです。
新型コロナウイルスの感染拡大状況に鑑みオンラインでの開催となりましたが、遠方や海外在住者を含む10名の皆さんにご参加いただきました。

講演(約40分)

The Alexander Technique について

まずは、アレクサンダー・テクニックとは何か、というお話から。創始者であるオーストラリア出身のF.M.アレクサンダー氏(1869-1955)がどのような経緯でアレクサンダー・テクニックを確立していったのか、その過程で何を考えたのかなどについて詳しくお話しいただきました。アレクサンダー氏が舞台俳優であったことから、人ごとではないお話の数々が早くも登場。昔から声や身体に関する舞台俳優の悩みは尽きないようです。
その後、欧米の演劇教育現場におけるアレクサンダー・テクニックのクラスについての話題へ。芳野先生が実際に指導にあたられたニューヨークのジュリアード音楽院のダンス科でのアレクサンダー・テクニックの授業内容についてお話しいただきました。多様性と個性への学びを同時に深めていくというとても興味深い授業内容でした。

演劇における「からだの使い方」を学ぶ意義について

続いて、いよいよ本企画のテーマに迫っていきます。
俳優がアレクサンダー・テクニックのレッスンに向かうきっかけの多くは、俳優以外の事例と同じく痛みなどの不調とのことですが、アレクサンダー・テクニックのレッスンは病院における治療行為とは異なります。では、アレクサンダー・テクニックは俳優の「不調」とどのように向き合い、その上でどのような過程を経て自分のからだや自分自身を表現に活かすまでに至るのか。「演劇を続け得る”身体状況”をつくること」「自分の”個性”を正しく認識すること」など、いくつかのポイントから詳しくお話しいただきました。
お話の中で出てきた、自分自身の「セルフブラック企業化」ということばがとても印象的でした。熱心さや一生懸命さと呼ばれるものは、時に自分自身に対する必要以上の厳しさを生み出します。パワハラは他者同士だけではなく、自分ともうひとりの自分との間においても起こりがちなものであることがよく理解できました。

ミニワーク(約10分)

続いて、椅子を使ってのミニワークへ。ここからは、実際にからだを動かしていきます。
行うのは、とてもシンプルな「立つ」「座る」の動作。例えば舞台の出はけの時などに必要とされるような、余分な表現や意味、自分の癖さえも抜いた、プレーンな、ベーシックな動きとはどんなものかを探ります。

「まずは立ち上がってみてください」と芳野先生。
参加者の方が次々に立ち上がっていきますが、これだけでも、それぞれに手の位置や折り曲げる腰の角度、立ち上がるスピードなどが全く違っているのがわかります。続いて座る動作を行いますが、これも同様に違いが見えます。
この動きを、よりスムーズで癖のないものにしていくため、関節を合理的に使った動きがレクチャーされました。

芳野先生が、脚の関節の位置に三色のゴムをはめ、各関節がどこにどんな風についているのか、また、立ち上がる時や座る時でそれぞれにどの関節をどのタイミングでどのように動かすのが最も合理的かを解説。それに合わせて参加者も動いていきます。
解説の前後と比べると、各参加者の動きは立った状態と座った状態の「あいだ」が明確になり、動く速度も一定になり、より「スムーズ」という印象を与える動きに変化していたと思います。

演技といえば「付け加える」ことが意識されがちですが、このように癖や無駄や無理のない一番楽な動作、関節や筋肉にあった動作を理解しベースに置くことで、役柄にあった動きにもつなげやすくなるのでは、というお話でワークは終了しました。

質疑応答(約10分)

質疑応答のコーナーでは、以下のような質問が出ました。

  • 自分ひとりでプレーンな動きを習得する場合には、どういうことを意識すればよいか?(コロナのため人に会って指導を受けることが難しい状況を受けて出た質問)
  • 背中を柔らかくするにはどうすればよいか?(演出家から「背中がかたい」とよく言われることから出た質問)
  • からだの左右のバランスが違うと感じるし、整体の人にもそう言われる。自分で正確に認識することが難しいが、どうしたら左右のバランスを直せるか?
  • アレクサンダー・テクニックのレッスンをオンラインで行うことは可能か?あるいはすでに実施されているのか、効果的か、などについて、先生のお考えを伺いたい。
  • 最近、芝居の本番中に呼吸のしづらさを感じる場面がある。そういう時にからだがどういう状態になっているのかを知りたい。

自分との向き合い方や動きの連動、コンプレックスの問題など、質問によっては意外な角度から、各質問にとても丁寧にお答えいただきました。
運営側で想定していたよりもたくさんの質問をいただいたことから、参加者の皆さんがさまざまにからだに対する興味や問題等を抱えておられることが窺えました。

このレポートを書くにあたってワークショップの映像を見直しましたが、講演とワークを経て、日常生活をおくったり表現活動を行ったりしたあとでもう一度話の内容を聞いてみると、自分の中でより理解が進むのが感じられました。

また来年度以降、コロナがおさまれば対面で、状況次第ではオンラインで、同様の企画を再び開催できればと考えています。

(文責・筒井加寿子)

 - 2020年度事業, 事業関連

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