NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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【実施報告】座談会「舞台芸術における”働き方”とはなにか」(2021.1.25実施)

      2021/06/10

2021年1月25日(月)、THEATRE E9 KYOTOにて、座談会企画「舞台芸術における”働き方”とはなにか」を実施しました。
緊急事態宣言の影響で18:30~20:00の90分という非常に短い時間での開催でしたが、7名の方にご参加いただき、様々な意見交換が行われました。
俳優、制作者、プロデューサー、学生、施設管理者と様々な職種の参加者に、理事メンバー(演出家、劇作家、団体主宰、技術スタッフ、俳優)も加わり、今回はざっくりと大きく「働き方」をテーマにお話をしました。

今回の趣旨、大事にしたいこと
まずこの企画では、なにかひとつの正解を導きだすのではなく、意見や価値観を交換・共有し、活動の方法の「選択肢を増やす」ことを目的としています。
舞台芸術という場において、公演形態は様々で、そこに参加している方(俳優・スタッフ問わず)の生活のスタイルも異なります。全員が無理なく舞台活動、そして自身の生活を続けていけるために選択肢を増やすことは重要だと考えています。
お金の問題、時間(稽古時間・劇場にいる時間)の問題、契約の問題・・・など様々な課題は出てくると思いますが、ではどうしたら解決あるいは改善していけるのかを、今回だけでなく、時間をかけて、様々な人とお話ができたらと思います。

実施方法 “ワールドカフェ”
今回の座談会は「ワールドカフェ」という方式で行いました。
ワールドカフェとはワークショップ形式のひとつで、少人数のグループに分かれて一定時間お話をし、時間がきたら各グループの誰かひとりは残り、他の人は別のグループへ行ってまた一定時間お話をする、というものです。
もう少し詳しく知りたい方はこちらのサイトにまとまった説明があるので読んでみてください。→【3分でわかる】ワールドカフェとは?

この形式は、3~4名の少人数で話をするため、参加者のみなさんそれぞれが自分の意見を言う時間が設けられていることと、他の人との対話の時間を設けることができます。さらに、グループを移動することで違った視点の話を受けて、新たな意見が交わされていきます。
今回は20分×3回行いましたが、どのグループも会話が弾んでおり、20分じゃ話し足りない!という雰囲気が漂っていました。

>実際の様子

全体シェア
最後に、各グループでどんな話があったのかをシェアしました。

まずひとつめのグループ。

 ・芸術関係者の労働者性というキーワードが中心になっていた。
 ・小劇場は時給換算できるような仕事の仕方にはなっていないし、誰かの無理によってぎりぎり成立していることがある。
 ・「お金がない。」
 ・フリーランス的にしている人が多いが、雇用されるのとは異なり、フリーランスとはリスクも含めて自分で自分の面倒をみるということ。確定申告の方法や保険や税金をどうしたらいいのかを教えてもらう機会がないままなし崩し的にフリーランスとして仕事をすることになってしまうため、フリーランスとして仕事をするという意識が全体的に低い。
 ・演劇好き・観劇者を増やして支えてもらうというということでお金のめぐりがよくなるのではないかという意見もあるが、そこまで手がまわっていない。
 ・スポンサーや助成金は経済的に重要だが、スポンサーのために表現の幅が狭まる場合があったり、助成金に頼ることによって行政の対応に振り回される場合もある。
 ・演劇は公教育の中にはないので、演劇を知らないまま義務教育を終える人も多い。(海外では公教育に演劇の授業がある国がある)
というような話がありました。

そして次のグループ。こちらはお金の話が中心でした。

・ギャラは言い値でいいのか。
・最低賃金を基準にギャラを考える、でいいのか。
・主催者は赤字が前提である。
・お金がないとなると、どこから持ってこないといけないけど、それをお客さんに転嫁するとチケット代がどんどん上がっていく。そんなことはできない・・・。
・お金が回っていない状況で賃金を求めることが正当なのだろうか。(賃金を求めるのはお金が回る状態を作ってからではないだろうか)
・断るときはきちんと理由を伝えて断ろう。コミュニケーションをしっかりとる。
・市場価値でギャラが決まっていく場合がある。(時間ではない)
・今は果たして「理不尽」な状況なのだろうか?

そして、最後のグループ。

・劇場に入る前の、稽古場にいる時間や自宅での作業時間についてはどう考えるのか。労働なのだろうか?
・劇団員とフリーでは状況が違う。劇団員だと団体に依存してしまう場合があるのではないか
・精神的に疲れてしまう人が多いような気がする。(実際、参加者の数人は倒れてしまった経験がある)それはなぜなのか。どんな状況なのか。
 →「私がやらなきゃ」「まだ若いから経験を積まなければ」という思いで無理をしてしまう。
 →活動する時間をコントロールする(〇時以降は作業をしないとか)、誰かに作業を振る、といった対策が必要なのではないか。
・リーダーシップの学びの場が必要なのではないか。

どのグループも付箋には書かれていないことや、共有の時間で伝えきれなかったことがたくさんありました。もう少し時間があれば、改善策の話もでてきたかもしれません。今回は今みなさんが抱えている様々な悩み・課題・問題が浮き彫りになったかと思います。

今後に向けて
冒頭にも述べましたように、この座談会は今回限りの企画ではなく、継続して行っていく予定のものです。次回もまた同じような形式にするかはまだわかりませんが、もう少しテーマを絞って話をする場を設けていこうと考えております。
今回参加してくださった方に、後日アンケートにご回答いただきました。多くの方から「もう少し時間が欲しかった」「少人数で話す形式は良かった」「良い機会だった」とのご意見をいただきました。具体的な解決策が見つかるのか、先の長い話題ではあるかと思いますが、まずは自分の考えを言葉にしてみること、他の人の状況を知り、それを当人から当人の言葉で聞くことは、現場ではなかなかできないことだと思います。その場ではわからなかったことも時間が経ってピンとくることもあるかもしれません。やってみなければわからないこともあります。まずは、思い込みを捨てて、なるべく無理や負担を減らして、自身の活動と生活を豊かに続けていける手がかりになる機会になる場を、今後も提案していこうと思います。

(文責・北方こだち)

 - 2020年度事業

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