NPO法人 京都舞台芸術協会 – Kyoto Performing Arts Organization

京都を中心に地域の舞台芸術家同志の交流や人材育成事業、創作環境の整備を主な目的として活動を行う団体です。

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【実施報告】「思考と技術のトークー『稽古場』と『創作プロセス』を見つめ直す」

   

2021年2月18日、YouTubeライブにてオンライントークイベント「思考と技術のトークー『稽古場』と『創作プロセス』を見つめ直す」を開催いたしました。

いま、否応なく変化する時代の中で、あらゆることを再考しアップデートしていくことが求められています。舞台芸術の担い手1人ひとりにも、多くの問題・課題を見据えながら、その解決に向けて行動できる、つまり考え続け実践する力=思考と技術を育む機会を目指して、「思考と技術のトーク」と題しました。今回は、「稽古場」と「創作プロセス」という、舞台芸術関係者全員に関係するテーマを設定し、これまでの「当たり前」から少し距離をとって見つめ直す、そんなトークイベントを試みました。

ゲストには、舞台芸術の「稽古場」に自ら立ち会い、「創作プロセス」を記録する試みをされている松尾加奈さんをお迎えしました。松尾さんは、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻を修了され、その後はロームシアター京都リサーチプログラムのリサーチャーとして、今回のテーマに関する研究などもされてきました。

19:30〜21:00の90分のイベントは、はじめに松尾さんからこれまでの研究事例や考察などをプレゼンテーションいただき、その後、協会理事の筒井加寿子(劇作家・演出家)と松岡咲子(俳優)、松尾さんの3名でトークYouTubeライブのコメント投稿を通じて、視聴者からの声も取り込みながら話を進めました。視聴者も実際の創り手の方々が多く、リアリティある課題などがあがり、現場に則した議論で和気藹々とした雰囲気でした。

◾️プレゼンテーション(30分)

松尾さんのプレゼンテーションでは、ご自身が立ち会ってきた稽古場の分析から、舞台芸術の稽古場における協働について、そして、「当たり前」から少し距離を取って創り方を再考してみることについてお話しいただきました。集団創作である以上、あらゆる表現から一つの演出を決定する手続きが必要となるのが稽古ですが、その進め方や意見の集め方、そして相手が納得しているのかどうかを確認する反応の確かめ方まで、実際に立ち会った稽古場の事例をもとにお話いただきました。例えば、稽古を進行する際の言い回しひとつにとっても、1人の「このシーンやりましょう。」という声かけではなく、「次のシーンに行きますか?」「〜のところから始めますか?」というような声かけが頻繁に発せられていること。これは、効率を求めた命令形ではなく、疑問や提案の形で、常に相手の反応を待つような姿勢であり、稽古が煮詰まった際にもこの姿勢があることで、稽古場の空気を流動させていくようにもみられると松尾さんは言います。

言葉遣いのみにとどまらず、振る舞いや話し合う際の人の配置など、稽古場でおきているコミュニケーションのひとつひとつが細やかに分析されている松尾さんのお話は、各々が経験してきた稽古場をまた違った視点で捉え直す時間でした。

◾️ディスカッション(50分)

後半の三者でのトークでも、一度これまでの「当たり前」を見つめ直しながら、現状のアップデートができる余地を探るような議論となりました。

稽古メンバーひとり1人の納得を尊重しようと、話し合いの機会を増やすことは、協働にむかう良い姿勢のようにも見えますが、一方で、芸術創作であるのに一つの正解のようなものを導こうとしてしまう危険性もあります。また、舞台芸術の創作において、身体で納得する、つまり、やってみることで納得していくプロセスが存在することも確かです。この点は、松尾さんの体験したイギリスの稽古場のお話から、日本と海外での文化的な違いもあるだろう、という話題もあがりました。

稽古場は、密室化し閉ざされがちなため、ハラスメントなどのリスクも伴い、昨今は演劇界でもこの問題がよく議論されています。松尾さんの活動の中でも、記録者/第三者の存在について、ひとりの俳優にインタビューした際「第三者のいない現場の方がちょっと怖い。」という風な回答があったとのこと。記録者/第三者の存在が、ハラスメント防止の一端を担う可能性はありますが、どのように第三者としての存在を保つのかという難しさも考えられます。場に居続けることで、メンバーの一員と化し、第三者でなくなってしまう場合があるからです。その他、創作プロセスは個人的でプライベートでもあるがゆえ、あまり他人に見られたくないという人もいます。そういった難しさがありつつも、第三者が稽古場や創作プロセスを記録することは、客観的な目線によって、メンバーの気づかない作品や集団の魅力を発掘することもできるかもしれません。そういった有効性もあげられつつ、第三者の存在についての議論がなされました。

このトークを経て、これからの稽古場と創作プロセスについては、どのように風を通し、個人を尊重しながら協働していくかを考えざるを得ないように感じました。それは現代社会のあらゆる組織においても同様かと思います。正解はなく、トライ&エラーでしかアップデートしていけないことも念頭に、京都舞台芸術の担い手ひとりひとりが考え、自身の選択と実践で、創作環境がより良くなっていけばと願います。

(文責・松岡咲子)

 - 2020年度事業, 未分類

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